朴大統領は長期外遊に出るという(聯合=共同)
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)を前に、アフリカ、フランス歴訪に旅立つ。サミットにゲスト国として参加すると“宗主国様”のご機嫌を損ねると計算したのだろうか。
だが、韓国では現在、国策銀行の信用力問題に直結しかねない造船・海運危機で緊張が高まっている。「リストラされる労働者による暴動発生」まで予測する向きがあるのに、12日間も国を空けるとは…。
この内憂外患ならぬ“内患外遊”が、政権のレームダック化を一層進めることは間違いない。
エチオピア、ウガンダ、ケニアへの訪問が、日本政府がサミットへのゲスト招待を非公式打診した際に決まっていたのなら、即座に「別の外交日程がある」と断ったはずだ。サミットの日程は1年ほど前から分かっている。
主催国が近隣国をゲストとして招待するのも慣例だ。つまり、出席しようと思えば、できたはずなのだ。
やはり、「サミットには出席したくない」との思いが先にあり、すでに決まっていたフランス訪問(=修好130周年。6月1~4日)の前にアフリカ3カ国訪問の日程をつくったのだろう。
韓国政府は昨春、安倍晋三首相の米上下両院合同会議での演説を潰すため、猛烈な対米工作を展開した。今春は、サミットに続くオバマ米大統領の広島訪問を阻止するために画策した。
どちらも、「戦犯国家・日本に免罪符を与えるからダメだ」という、OINK(オンリー・イン・コリア=『韓国でしかあり得ない』の意)論理に基づく。
韓国の保守系紙は「オバマは広島に行くなら退陣してからにしろ」「韓国人慰霊碑にも献花しろ」と命令調の注文を付けた。左翼紙に至っては「伊勢は日本の右翼の聖地」とまで指弾した。
朴氏としては“憎き安倍”はもちろん、「広島に行くオバマ」にも会いたくないのだろう。
「オバマ、安倍、朴の3首脳が並んだ写真を撮られたら、中国が怒る」「慰安婦合意以来、わが国は米国寄りとみられているから、米中のバランサーを取らなくては」-そんな思いもあるに違いない。
朴氏は5月初旬、イランを訪問した。韓国紙は「4兆円規模の受注成果を上げた」などと、はやし立てた(=実は、何の拘束力もない了解覚書などに盛られた数字の合計額)。おかげで、総選挙での与党惨敗の直後に29%まで落ちた支持率が35%まで回復した。
アフリカ3カ国を訪問すれば、韓国紙が「対アフリカ経済外交に大成果」などとはしゃぎ、支持率が上がると読んでいるのかもしれない。
韓国の現状を見れば、サミットに出席して、米国に「為替操作を少し見逃して」、日本に「何とかスワップの再開を」と頼む方が、お国のためになるのではないか。
いや、「お国のため」という発想は、韓国の大統領になくて当然。だから、韓国の新聞も与野党も、大統領がサミットではなくアフリカに行くことを批判しないのだ。
内患を放置しての長期外遊-。このツケは、時を置かずに表面化するかもしれない。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。
主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160519/frn1605191140002-n1.htm http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160519/frn1605191140002-n2.htm
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